
実家を相続放棄すれば負担はなくなる?放棄後も家の保存義務が残る場合とは
実家を相続放棄すると何が変わる?財産と負担の基本
相続放棄は、実家の所有権だけを手放す手続きではありません。まずは、引き継がなくなる財産と、別に考える必要がある負担を分けて確認しましょう。
実家だけでなく預貯金や借金も含めた相続放棄の対象
相続放棄をすると、その相続について初めから相続人ではなかったものと扱われます。実家や土地だけでなく、預貯金、有価証券などの財産も、借金などの債務も原則として引き継ぎません。実家は不要でも預貯金は受け取りたい、という選び方はできない仕組みです。
判断するときは、実家の状態だけでなく、故人の財産と債務を全体で確認することが大切です。なお、受取人が指定された生命保険金など、原則として遺産に含まれないものもあります。
遺産分割で実家を取得しない場合と相続放棄との違い
遺産分割で実家をきょうだいが取得し、自分は取得しないと決めても、法律上の相続放棄にはなりません。相続放棄には、家庭裁判所への申述が必要です。
また、相続人同士で借金を一人が負担すると決めても、債権者の同意がなければ、ほかの相続人が支払いを求められる可能性があります。財産を受け取らない合意だけで、借金からも離れられるとは限らない点に気をつけましょう。
固定資産税の納税義務と放棄後にも残り得る家の保存義務の違い
相続放棄が有効であれば、原則として実家の所有権や故人の未納の固定資産税を相続しません。ただし、もともと自分が持っている共有持分の税負担などは別です。納税通知が届いた場合は放置せず、市区町村へ相続放棄した旨を伝え、必要書類を確認してください。
一方、家の保存義務は所有者としての納税義務とは異なります。相続放棄時に実家を現に占有していた場合は、引き渡しまで保存を続けなければならないことがあります。
相続放棄後も実家の保存義務が残るのはどんな場合?
相続放棄をした人全員に、実家の保存義務が残るわけではありません。判断の中心になるのは、放棄した時点で、その家を実際に支配していたかどうかです。
2023年4月施行の改正民法による保存義務の明確化
2023年4月施行の改正民法では、民法第940条により、相続放棄後の義務を負う人や対象が明確になりました。対象は、相続放棄時に相続財産を現に占有している人です。その財産を相続人または相続財産清算人へ引き渡すまで、保存する義務を負います。
親族であることや、以前その家に住んでいたことだけで、一律に義務が生じる制度ではありません。
判断のポイントとなる相続放棄時の現に占有している状態
現に占有しているかは、住民票や登記上の名義だけでは決まりません。実際に住んでいる、家財を置いて継続して使用しているなど、その家を事実上支配している状況が判断材料になります。
鍵を持っているだけで必ず該当するとも、遠方に住んでいれば必ず該当しないともいえません。出入りの頻度や利用状況などを含めて確認します。
実家で同居していた場合と離れて暮らしていた場合の確認点
故人と同居し、死亡後も実家で生活している場合は、現に占有していると判断されやすい状況です。離れて暮らしていた場合は、実家を使用していたか、管理をどの程度担っていたかを整理しましょう。
見回りや郵便物の回収をしたことだけで結論を出すのではなく、いつから、何のために、どのように関わっていたかを具体的に伝えられるようにします。
自己の財産に対するのと同一の注意を求められる保存義務の基準
法律上は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって保存することが求められます。財産の価値や状態を保つための義務であり、住みやすく改装する義務ではありません。
ただし、自分の家なら放置するという理由で、危険な状態をそのままにしてよいわけではありません。必要な対応は、建物の傷み方や周辺環境によって変わります。
保存義務が残った実家で必要な対応と費用負担は?
保存義務が残る場合も、すべての修繕を際限なく引き受けるということではありません。現状の悪化を防ぐ対応と、売却などに向けた改修を分けて考えましょう。
雨漏りや外壁の破損など建物の状態に応じた保存行為
保存行為としては、施錠、破損した窓の応急処置、雨漏りによる被害拡大の防止などが考えられます。外壁や屋根材が落ちそうなときは、周囲に人が近づかないようにする対応も必要です。
必要な措置の範囲は一律ではありません。まず写真などで状態を確認し、緊急性と工事の規模を整理します。高所や倒壊のおそれがある場所には自分で入らず、修繕業者や自治体の担当窓口に相談してください。大規模な改修や解体は、権限の確認も欠かせません。
倒壊や落下物による近隣被害と損害賠償責任の可能性
実家の瓦や外壁が落ち、通行人や隣家に被害を与えた場合は、民法第717条の工作物責任や、不法行為による損害賠償責任が問題になることがあります。
相続放棄をした人が必ず責任を負うわけではありませんが、放棄したという理由だけで、事故に関する責任がすべてなくなるとも限りません。占有の状況、建物の欠陥、危険を把握していたか、必要な注意を尽くしたかなどが関わります。破損に気づいた日時や応急対応も記録しておくと、状況を説明しやすくなります。
修繕費などを立て替える際の注意点と記録の保管
保存に必要な費用を立て替えても、後で必ず全額が戻るとは限りません。相続財産から精算できるかは、支出の必要性や財産の残額などによって変わります。
工事前後の写真、見積書、領収書、業者とのやり取りを保管しましょう。緊急時を除き、引き渡し先となる相続人や専門家に相談してから進めると、費用をめぐる行き違いを減らせます。故人の預金から支払う行為は相続放棄への影響もあるため、自己判断で引き出さないことが大切です。
実家の保存義務はいつまで続く?引き渡し先と終了の条件
保存義務には、相続放棄から何か月という一律の期限はありません。誰が次に財産を引き受けるのかを確認し、実際の引き渡しにつなげることが必要です。
相続人または相続財産清算人への引き渡しによる保存義務の終了
民法第940条に基づく保存義務は、対象の財産を相続人または相続財産清算人へ引き渡すまで続きます。相続放棄の申述が受理されたことだけでは、終了しません。
引き渡しでは、鍵だけでなく、建物の状態や修繕履歴、注意が必要な場所も共有します。いつ、誰に、何を引き渡したかを書面に残すと、後日の確認に役立ちます。一方的に鍵を送るだけで十分とは限らないため、受け取りを確認しましょう。
相続放棄による次順位の親族への影響と情報共有の必要性
子などの第一順位の相続人が全員放棄すると、存命の父母や祖父母などの直系尊属へ、さらに該当者がいなければ兄弟姉妹などへ相続権が移ります。配偶者はこれらの順位とは別に、常に相続人となる立場です。
次順位の親族には、実家や借金の状況、放棄した事実を早めに伝えておくとよいでしょう。ただし、相続権が移ることと、その人に家の保存義務が当然に生じることは別の問題です。
相続人全員が放棄しても実家が自動的に国の所有にはならない理由
相続人全員が放棄しても、その時点で実家が自動的に国へ引き渡されるわけではありません。相続財産の清算や債権者への支払い、特別縁故者への財産分与など、必要な手続きを経て残った財産が国庫に帰属します。
誰も相続しないことだけを理由に、国や自治体がすぐに建物の管理を始めるわけではない点を押さえておきましょう。
相続財産清算人の選任申立てと予納金が必要になる場合
相続人がいない場合などには、利害関係人などが家庭裁判所へ相続財産清算人の選任を申し立てられます。保存義務を負う相続放棄者が申立てを検討することもあります。
申立費用に加え、管理費や清算人の報酬を賄う予納金が必要になる場合があります。金額は財産の内容などによるため、申立て先の家庭裁判所で確認してください。
実家の相続放棄を進める手続きと判断前の注意点
実家の扱いに迷っている間も、相続放棄の期限は進みます。財産調査と手続きの準備を並行し、放棄できなくなる行為を避けることが大切です。
自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月の期限
相続放棄の熟慮期間は、自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月です。通常は、故人の死亡と自分が相続人になったことを知った時が起点になります。
先順位の相続人が放棄した場合は、その放棄によって自分が相続人になったと知った時が問題になります。死亡日から一律に数えるわけではありませんが、起点に迷う場合は早めの確認が必要です。
家庭裁判所への申述に必要な書類と費用
申述先は、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。相続放棄申述書、故人の住民票除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本などを用意します。続柄によって追加の戸籍が必要です。
申述人一人につき収入印紙800円分のほか、連絡用の郵便料や戸籍取得費用がかかります。必要書類と郵便料は裁判所の案内で確認しましょう。
財産や借金の調査が間に合わない場合の熟慮期間の伸長申立て
期限内に財産調査が終わらず判断できない場合は、熟慮期間の伸長を家庭裁判所に申し立てる方法があります。自動で延びるわけではないため、原則3か月の期間が過ぎる前に手続きします。
調査している内容や時間が必要な理由を整理し、申立ての準備を進めてください。
単純承認とみなされる可能性のある実家の売却や遺品の処分
相続財産を処分すると、相続を受け入れる単純承認をしたものとみなされ、放棄できなくなる可能性があります。実家の売却や解体、価値のある遺品の売却などは、判断前に進めないようにしましょう。
保存行為は原則として別ですが、片づけなら何でも問題ないとはいえません。放棄後でも、財産の隠匿や私的な消費などが問題になる場合があります。
相続放棄や保存義務の判断を弁護士などに確認する必要性
弁護士には、放棄の可否、占有状況、費用負担や親族間の調整を相談できます。司法書士には、対応範囲内で裁判所提出書類の作成などを相談できます。
死亡を知った日、財産一覧、実家の利用状況、既に処分した物を整理しておくと、具体的な確認につながります。
相続放棄以外に実家の負担を減らす選択肢は?
実家を相続して売却した方が、財産全体で見た負担を抑えられる場合もあります。ただし、売却見込みだけで決めず、借金や維持費も含めて比較しましょう。
相続して売却する場合の査定額と維持費・処分費の比較
比較したいのは、査定額そのものではなく、売却代金から諸費用を差し引いた手取りです。相続登記、家財の片づけ、測量、仲介手数料、売却益にかかる税金などを確認します。
売れるまでの固定資産税や保険料、草木の手入れ代も考慮しましょう。査定額は売却を保証する金額ではないため、想定期間や値下げの可能性も聞いておくと判断しやすくなります。
仲介と不動産買取の違いから考える売却方法
仲介は、不動産会社を通じて買主を探す方法です。市場での売却を目指せますが、買主が見つかる時期は確定しません。内覧や価格調整への対応が必要になる場合もあります。
不動産買取は、不動産会社が直接買主になる方法です。条件が合えば売却時期を見通しやすい一方、再販売費用などが考慮され、仲介より価格が低くなる傾向があります。価格と負担の両面で比較してください。
解体して土地を売る場合の費用と固定資産税への影響
古い実家でも、解体せずに売却できる場合があります。先に壊すと解体費を回収できないこともあるため、建物付きと更地の両方で査定を確認しましょう。
住宅を解体すると、土地の固定資産税などの住宅用地特例が適用されなくなり、税負担が増える可能性があります。課税は原則として1月1日の状況が基準です。解体の時期や特例の扱いは自治体へ確認することが大切です。
建物のある土地は対象外となる相続土地国庫帰属制度の条件
相続土地国庫帰属制度は、相続などで取得した土地を、一定の要件のもとで国に引き渡す制度です。建物がある土地は対象外で、境界が明らかでない土地なども申請できません。
ほかにも管理上の条件があり、更地にすれば必ず承認されるわけではありません。審査手数料に加え、承認後には原則として10年分の標準的な管理費に相当する負担金が必要です。解体前に法務局で条件を確認しましょう。
岐阜市不動産買取センターで検討できる実家の売却
相続放棄を決める前に、実家を売却できる可能性を確かめておく方法もあります。価格と引き渡し条件が分かると、相続した場合の負担を具体的に比較できます。
相続物件や空き家を対象とした直接買取と仲介による売却の相談
岐阜市不動産買取センターでは、相続物件や空き家を含む戸建て、土地、マンションの売却を相談できます。自社での直接買取に対応し、仲介による売却も含めて、物件の条件や売主様の希望に応じた方法を検討します。
直接買取では一般の買主を探す期間を省けるため、早期の現金化を希望する場合の選択肢になります。実際の時期は、権利関係や契約条件の確認によって変わります。
築年数の古い戸建てや条件の厳しい土地も含めた査定対応
築年数の古い戸建てや、条件の厳しい土地についても査定の相談に対応しています。古いから価値がないと決めつけず、立地や接道、土地の形、建物の状態を確認することが出発点です。
他社で売却が難しいとされた物件も相談できますが、すべての物件で買取を約束するものではありません。家財や破損箇所の状況も伝えておくと、引き渡し条件を具体的に確認できます。
業界歴45年以上の知見と代表による一貫した対応
業界歴45年以上の知見をもとに、地域の不動産事情や物件ごとの条件を踏まえて売却を検討します。代表が問い合わせから一貫して対応するため、希望する時期や実家の事情を共有しながら相談を進められる体制です。
価格だけでなく、売却前に必要な準備や費用も確認し、手元に残る金額を整理していきます。
相続放棄の判断前に把握したい売却の見通しと放棄後の売却権限の注意点
査定の依頼だけで通常は相続財産の処分には当たりませんが、売買契約や解体は別です。放棄を検討している段階では、その旨を伝え、売却の見通しを確認する範囲にとどめましょう。
相続放棄後は、保存義務が残っていても、自分の判断で実家を売却する権限はありません。売却は権限を持つ相続人や相続財産清算人が行います。放棄の可否は法律の専門家へ、価格や売却条件は不動産会社へ分けて確認してください。
まとめ
実家を相続放棄すると、原則として所有権や借金を引き継がなくなります。ただし、放棄した時点で実家を現に占有していた場合は、相続人または相続財産清算人へ引き渡すまで保存義務が残ります。固定資産税の納税義務とは分けて考えることが大切です。
義務の有無は、同居や利用、管理の実態によって判断されます。建物の危険箇所を把握し、必要な対応や立替費用を記録するとともに、引き渡し先の確認を進めましょう。
相続放棄の期限は原則3か月です。迷っている段階で売却や解体を進めず、財産と借金の調査、実家の査定、専門家への確認を並行すると、判断材料をそろえやすくなります。放棄すればすべて解決すると考えず、相続して売却する場合も含め、ご自身の暮らしに無理のない選択を検討してください。