売却したい不動産が越境している場合の注意点とは?不動産の売却方法も解説

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売却したい不動産が越境している場合の注意点とは?不動産の売却方法も解説

売却したい不動産が越境しているケース、あるいは隣家に越境されているシチュエーションの場合、売却に支障が出やすくなることをご存じでしょうか。
よりスムーズかつ安全に売却活動を終えるには、越境の概要や売り方などを知っておく必要があります。
今回は越境とは何か、越境している不動産の売却における注意点、そして越境物がある不動産の売却方法を解説します。

売却前に把握しておきたい不動産の「越境」とは

売却前に把握しておきたい不動産の「越境」とは

越境とは、塀や樹木、建物の一部分などが土地の境界線を越え、隣の敷地に侵入した状態のことです。
土地の境界線からはみ出して、隣地に侵入しているものは越境物と呼ばれます。
反対に、隣地から自分の敷地に侵入している状態は被越境となり、侵入しているものには被越境物の名称が使われます。

越境物の種類

越境物あるいは被越境物に該当するものは、主に以下のとおりです。

●木材やコンクリートなどで建てられた塀
●敷地に植えられた樹木から伸びた枝や根
●地中に埋められている給排水管
●建物の屋根あるいは出窓など


越境物は敷地に接しているものだけでなく、空中あるいは地中にあるものも対象です。
越境しているケース、あるいは隣家から被越境されている場合は、不動産を建てたあるいは購入した段階で、不動産会社から説明を受けている可能性があります。
しかし、建築および購入時点からある程度の年数が経過していると、越境しているかどうか判断が付きにくいケースがあるのです。

越境が問題になるケース

隣地へ越境している、または隣地から自分の敷地に越境されているからといって、必ずしも問題が発生するとは限りません。
自宅から隣地へ越境しているケースでは、隣家に住む方から苦情を受けなければ、とくに問題なく生活できることもあります。
しかし、売却前に問題が発生していない状態でも、住み始めてしばらく経ってから、越境を理由に隣家に住む方とトラブルに発展する可能性はゼロとはいえません。
購入後のトラブル発生への懸念から、越境しているケースや越境されているケースの不動産をそのまま売却しても、すぐに買主が見つからないことがあります。

売却予定の不動産が越境している場合の注意点

売却予定の不動産が越境している場合の注意点

売却する不動産が越境していると確認できる場合は、境界線の確定など注意点を踏まえたうえで、売却活動を進める必要があります。

注意点①:売却前に境界確定が必要

越境している不動産の売却では、売却活動をスタートさせる前に、境界線の確定作業を済ませなければなりません。
境界確定が必要な理由は、越境物そのものと越境範囲を正しく把握するためです。
土地の境界線は、境界確定図あるいは地積測量図に記載されていることもありますが、先住者が購入した当時と不動産を売却する時点とでは、測量技術が異なる可能性があります。
越境物に関する記載が漏れている、過去の測量にもとづく境界線の位置が本来の場所からズレているなど、正確性に欠けることもあるでしょう。
古い情報をうのみにすると、越境されている不動産の買主が建て替え時に、本来の境界線との差が原因で土地面積が縮小され、予定より小さな家しか建てられなくなるおそれもあります。
不動産の売主には契約不適合責任があり、売却した不動産が売買契約で買主に説明した内容と異なると、契約解除を求められることがあります。
売買契約の解除だけでなく、損害賠償を請求されるケースもあるため、不動産売却では十分な注意が必要なのです。
また、境界確定によって近隣トラブルを回避できるほか、金融機関の審査においても評価が上がる可能性があります。
正確な境界線を示しておくことは、将来的なトラブルのリスクを下げるうえでも非常に大切です。
売却活動を始める前には、境界確定および越境確認を済ませ、買主に正しい情報を提示できるように土地面積と越境の状況を調べておきましょう。

注意点②:越境物の問題を極力残さない

越境している不動産の売却における注意点のひとつは、越境問題を極力解決することです。
買主からすれば、越境物がある不動産の購入には大きな不安が伴うため、購入候補から除外されやすい物件ともいえます。
もし、越境問題の解決に時間がかかるようなら、覚書を作成し、買主と情報を共有しましょう。
この場合の覚書とは、隣家に住む方との間で取り決めた内容や、締結した契約の補足および内容などをまとめた書類のことです。
覚書があれば不動産を購入したあと、越境物が原因で買主が隣家に住む方とトラブルになるリスクを抑えられます。
なお、覚書の作成には隣家に住む方との関係が重要であり、良好な関係が築けていないと、交渉次第では自分にとって不利になる内容にまとめられるおそれがあります。
互いが納得できる交渉にするためにも、日ごろから隣家に住む方と良い関係を築き上げておくと良いでしょう。
さらに、こうした良好な関係は、今後のスムーズな交渉に役立つことも多いはずです。

注意点③:住宅ローンが原因でもめることがある

越境している不動産を売却する場合は、隣家に住む方が住宅ローンを組めない点に注意が必要です。
建築基準法では「一敷地一建物」が原則であり、建物が敷地の境界を越えて複数の敷地にまたがっている場合は、建築基準法で原則とされる「一敷地一建物」に抵触し、完了検査や住宅ローン審査に影響が出る可能性があります。
完了検査に合格しないと住宅ローンが組めず、自己資金を用意するか、異なる金融機関のローンを探すことになります。
そのため、現在は越境による問題がないとしても、将来的には建て替えを理由に隣家に住む方とトラブルになるかもしれません。
買主からすれば、隣人トラブルに巻き込まれるリスクが高い不動産は避けたいため、越境している不動産をそのまま売却するのは難しいといえるでしょう。
なお、越境物が原因で住宅ローンが組めず、建て替え時にトラブルが生じる可能性も否定できません。

越境物がある不動産を売却するための方法

越境物がある不動産を売却するための方法

越境物がある状態で不動産を売却する方法は、主に越境物の撤去や覚書作成などの3パターンです。

売却方法①:越境物を先に取り除く

越境している不動産を売却するなら、売却活動に入る前に越境物を排除したほうが良いでしょう。
買主にとって越境物は大きな不安材料であり、購入候補から除外されるおそれがあります。
少しでも売却できる可能性を上げるためにも、樹木の枝を剪定したり、塀の位置をずらしたりといった対策を講じてから、売却活動をスタートするのが望ましいです。

売却方法②:覚書を準備する

隣家に越境されている、もしくは取り除くのが難しい越境物がある場合は、覚書を作成して対処しましょう。
覚書の記載例としては、以下の内容が挙げられます。

●塀や樹木など越境物の種類
●今後建物を建て替えるタイミングで越境物を撤去すること
●不動産を所有する方が変更されても覚書の内容を継承すること


覚書の存在は、越境の事実を把握しており、なおかつ現状維持を認めたことを意味します。
不動産を売却したあと、買主と隣家に住む方の間でトラブルが生じるのを防ぐことにもつながるため、越境問題がある状態で不動産を売却する場合は必ず覚書を作成しましょう。

売却方法③:越境物がある部分を買取する

越境物の排除が難しいケースの売却方法としては、対象範囲を分筆し、不動産会社に買い取ってもらう方法が有効です。
越境している場合は、越境にあたる部分を分筆して買取をおこない、隣家から越境されているシチュエーションでは、分筆した部分を買い取ってもらう仕組みです。
ただし、買取を活用した売却方法では、建ぺい率および容積率が下がり、建物自体が既存不適格物件とみなされるおそれがあります。
越境物への対処法や売却方法の選び方など、越境物がある不動産の売却に少しでも不安を感じるなら、まず弊社にご相談ください。
お客様のご要望に沿ったご提案をさせていただきます。

まとめ

越境とは、塀や建物などが隣の敷地に侵入している状態です。
境界を確定させることで、近隣とのトラブルを回避しやすく、金融機関の審査で評価が上がる可能性もあるため、売却を進める前には忘れずに作業を済ませておきましょう。
越境物がある不動産の売却なら、越境物を排除する、あるいは覚書を作成するなどの方法がおすすめです。
状況によっては、買取を利用するという方法も考えられますが、建ぺい率や容積率に影響する可能性もあるため、専門家に相談しながら慎重に進めることを提案します。


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