所有者・共有者が行方不明でも不動産は売却できる?具体的な手続きを解説

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所有者・共有者が行方不明でも不動産は売却できる?具体的な手続きを解説

自分が関わっている不動産を売却したいと考えていても、不動産の所有者でなければ売却はできません。
しかし、所有者・共有者が行方不明だと売却できず、さまざまな問題が発生します。
そこで今回は、所有者・共有者が行方不明でも不動産を売却するために、失踪宣告の申し立て方法と具体的な売却方法、不在者財産管理人について解説します。

所有者・共有者が行方不明でも不動産を売却するための失踪宣告

所有者・共有者が行方不明でも不動産を売却するための失踪宣告

所有者・共有者が行方不明となっている不動産の売却には、失踪宣告が必要です。
まずは、失踪宣告とはどのようなものなのか、そして実際の申し立て方法を解説します。

失踪宣告の申し立てとは

失踪宣告とは、所有者や共有者が行方不明の不動産を売却するために必要な手続きです。
失踪宣告の申し立てがなされると、法律上、その人物は死亡したと見なされ、失踪が宣告されます。
失踪宣告によって死亡と判断された場合、配偶者や子どもなどが不動産を相続することが可能です。
このように、失踪宣告を経て不動産を相続すれば、相続人はその不動産を所有することになり、自由に売却することが可能となります。

普通失踪

失踪宣告の申し立てをおこなう場合、失踪した状況を明確にする必要があります。
具体的には、普通失踪と特別失踪(危難失踪)の2種類があり、どちらに該当するかを確認することが重要です。
普通失踪とは、事故などが発生せず、生死が7年以上不明である場合に認められる失踪状況です。
失踪宣告の申し立てが認められると、失踪から7年を経過した日をもって、その人物は死亡したものとして扱われます。

特別失踪(危難失踪)

特別失踪(危難失踪)とは、普通失踪に該当しない大きな事故などで行方不明になった場合に適用される失踪状況です。
具体的には、大規模な自然災害、船の沈没、戦争などによる行方不明が特別失踪(危難失踪)に該当します。
特別失踪(危難失踪)として失踪宣告の申し立てが認められた場合、原因となった事故などの1年後に法律上の死亡が認められます。

失踪宣告を申し立てる場合の注意点

失踪宣告の申し立てが可能なのは、行方不明の方と利害関係がある者に限られます。
たとえば、行方不明となっている方の相続人である配偶者や子どもは失踪宣告の申し立てをおこなえますが、相続人ではない遠い親戚や知人は申し立てをすることができません。
利害関係にない者が行方不明の方の不動産を売却する必要がある場合、利害関係者を代理人として委任することになります。
また、失踪宣告の申し立てには特定の費用がかかります。
具体的には、800円分の収入印紙、官報広告料4,816円、そして連絡用の切手代が必要です。
切手代は申し立てを行う家庭裁判所によって異なるため、各家庭裁判所に確認する必要があります。
失踪宣告の申し立ては、行方不明の方の本籍地または居住地にある家庭裁判所でおこなうことが求められます。
申し立てには、申立書に加えて、行方不明となっている方の戸籍謄本や戸籍付票などが必要です。

所有者・共有者が行方不明の不動産を売却する方法

所有者・共有者が行方不明の不動産を売却する方法

所有者・共有者が行方不明となっている不動産を売却するには、具体的にどのような方法をとれば良いか確認してみましょう。

相続登記をおこなう

失踪宣告により不動産の所有者が法律上死亡したと認められた場合、確定から10日以内に行方不明の方の本籍地または居住地の役所に失踪を届け出ます。
次に、売却したい不動産を自分の名義にするためには、法務局で相続登記をおこなう必要があります。
相続登記を行わなければ、不動産の売却ができないため、早めに手続きを済ませることが重要です。
相続登記に必要な書類は、登記申請書、行方不明となっている方の戸籍謄本、除籍謄本にくわえ、相続人全員の戸籍謄本や住民票の写しなどです。
また、複数の相続人がいる場合は、遺産分割協議書も必要となります。
この書類には、不動産や預貯金などの分割方法が記載されます。
手続きが完了したあと、法務局から登記完了証が届きますので、そのあと、信頼できる地元の不動産会社に査定と仲介を依頼しましょう。

行方不明の方が発見されたら?

行方不明の方が発見された場合、失踪宣告の取り消しが可能です。
失踪宣告の取り消しが認められた場合、原則として失踪宣告前の状態に戻す必要があります。
ただし、すでに不動産を売却している場合、その売却済み不動産については行方不明だった方に返還する必要はありません。

不動産共有者が行方不明の場合に利用できる制度

2023年4月1日から、不動産を共同で所有する共有者が行方不明となった場合に、不動産を売却しやすくなる2つの制度が導入されました。
1つ目は、裁判を通じて所在不明の共有者が持つ共有持分を取得する制度です。
この制度を利用する場合、裁判所が決めた代金を法務局に預ける形で共有持分を買い取ることができます。
2つ目は、裁判で不動産全体を売却する権限を取得する制度です。
この制度では、法務局に代金を預けるのではなく、売却権限のみが与えられることが特徴です。
実際に不動産の売却代金を受け取るためには、行方不明の共有者を除く共有者全員の同意を得たうえで買主を探す必要があります。

不在者財産管理人とは?

不在者財産管理人とは?

失踪宣告は、行方不明となった方の法律上の死亡を認め、相続により不動産を売却する方法です。
これ以外に、不在者財産管理人の選定により、行方不明となった方の不動産を売却する方法があります。

不在者財産管理人とは

不在者財産管理人とは、行方不明の方の代理としてその財産を管理する立場にある者です。
不在者財産管理人は、一定の許可を得たうえで、管理している不動産を売却することができます。
この不在者財産管理人の制度は、共同で所有する不動産の共有者のなかに行方不明の方がいる場合でも、不動産の売却を可能にします。
また、失踪宣告は行方不明となって7年を経過しなければ申し立てができませんが、不在者財産管理人の選定は長期間待つ必要がありません。

不在者財産管理人を選ぶ方法

不在者財産管理人を選ぶ場合、家族などの利害関係者ではなく、利害関係のない第三者を候補にするのが一般的です。
実際には、法律の専門家である弁護士などが候補者として選ばれることが多いでしょう。
ただし、弁護士が業務の一環として不在者財産管理人を引き受ける場合、報酬が発生することに注意が必要です。
不在者財産管理人候補者が決定した後、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てます。
不在者財産管理人は利害関係のない方が選ばれますが、申し立ては配偶者や子どもなどの利害関係者がおこなう必要があります。
また、不在者財産管理人の申し立てには、申立書、行方不明の方の戸籍謄本、戸籍付票にくわえ、不在者財産管理人候補者の住民票などが必要です。
さらに、申し立てには800円分の収入印紙と連絡用の切手代が必要となります。

権限外行為を許可してもらう

不在者財産管理人が決まり、不動産売却を進める場合、権限外行為の許可を得る必要があります。
権限外行為の許可は家庭裁判所に申し立てますが、許可を判断する際、家庭裁判所から関係者が呼び出されることがありますので注意が必要です。
家庭裁判所が不在者財産管理人の権限外行為を許可した場合、行方不明の方の不動産を売却することができます。

まとめ

失踪宣告とは、行方不明となっている方を法律上死亡したと判断するために必要なものです。
失踪宣告で不動産の所有者が死亡したと判断されたら、配偶者や子どもなどが相続登記をおこない、不動産の売却が可能な状態となります。
失踪宣告以外に弁護士などに不在者財産管理人を依頼し、権限外行為として不動産を売却することが可能です。


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